人権を映画で観て語った2日間

2月13日と14日に、旧作の日本映画を6本観た。
1951年から2015年まで、時代は様々だが、大いに考えさせられる作品ばかり。
家族の崩壊、リストラ、政治の謀略、戦争、差別、思想といった、現代にも通じるテーマを描いたすごい内容だ。


2日間とも大入り。年配が多いのが少々残念だが、会場は、問題意識を抱く人たちの熱気に包まれていた。


13日は友人の主催で合評会を開き、10人の仲間が意見を交換。
老舗の食事処「志の島」で、美味しい料理と酒で2時間半、非常に有意義かつ楽しいひとときを過ごした。


初日の一番人気作品は、熊井啓監督の『謀殺・下山事件』。未だに解決されない実在の事件を、執念で追う新聞記者の目を通して不正を暴き出す。


リアリズムに徹した迫力ある展開は、第一級のサスペンスだ。
骨太な体制批判も小気味がいい。
昨今の日本映画には観られない、スケールの大きさを堪能した。


山本薩夫監督の『人間の壁』では、香川京子の美しさと演技力が話題の的。
女性の良いところが前面に出ていた。
また、自立した女性をきちんと描いている点でも評価が高かった。


森川時久監督の『若者の旗』は、きょうだいの葛藤と、時代の状況を絡ませて、等身大で観せる。
再映を切望していた人も多く、感謝の声が挙がった。


今井正監督の『戦争と青春』は、前述の3作品に比べると、リアリティに欠ける。
作りすぎで、突っ込みどころが多い。
疑問点をお互いにぶつけ合って解決したり、批判したり…。


最年少の50代の女性は、今の若者観として、「空気を読むのに一生懸命で、本音を言わず、スルスル抜けていく。
その点、シニアは力がある。こんな風にきちんと語れる場があるのはうれしい」と話す。


各種映画祭の主催者が2人いたので、それぞれ裏話などを語って貰った。
皆、映画愛では誰にも
負けないと自負する人たちばかり。
大盛り上がりで、お開きとなった。


14日は閉会後、関西から参加した友人を見送りがてら、3人で名駅の居酒屋「安曇野庵」で、軽く呑む。


私は行定勲監督の『GO』を、前に観ているのでパスした。
しかし、友人は、「以前観た時より、深く観られた。差別の問題を的確に捉えて提起している」と高く評価していた。


降旗康男監督の『日本の黒幕』は、政治の暗部を描いた傑作。
東西の右翼対決、政商の暗躍、テロ、近親相姦など、我が国の恥部をこれでもかという程、抉り出している。
本作の魅力は何と言っても、佐分利信のドンの存在感の凄さに尽きる。


池田博穂監督の『薩チャン 正ちゃん』は、山本薩夫監督と今井正監督の、独立プロの軌跡を
記録した作品。
戦後の混乱期の映画の歴史がよく分かる。


体制に抗って、作家魂を貫いた数々の名作を、一部シーンとはいえ辿るのは大変楽しい。
気骨ある映画人たちが多数いたことを知り、感銘を受けた。


今井監督は「明るい映画を作り、明るい世の中にしたい」と言い、山本監督は「映画を通して社会の問題点を大衆に知らしめ、解決に向けて進みたい」と結ぶ。


果たして、今の日本映画に、そうした作品が
いくつあるのだろうか?