2006-01-01から1年間の記事一覧

武士の一分

男性にとって都合の良い女性像が描かれており、観ていて気分が良くなかった。だが、若者の成長物語ということで観れば、それなりに得るものはある。 「武士の一分」にこだわるあまり、献身的な愛を捧げてくれる妻・加世と話し合うこともせず、即刻、離縁を言…

父親たちの星条旗

”硫黄島の戦い”は太平洋戦争最大の激戦だ。唯一、米軍の死傷者が日本軍を上回ったことで知られている。 44年夏、米軍は、東京まで約2,100 キロメートルのマリアナ諸島を占領。 本土防衛の最後の砦として、日本軍は硫黄島に兵力約22,000名を送り込み、兵士た…

行 シネマ歌舞伎

歌舞伎というアートは、世界に誇る日本文化の一つ。 しかし、オペラは観に行くが、歌舞伎はどうも、という人が多いようだ。 それではバランスが悪い。 で、年に数回は、歌舞伎を観るようにしていた。 だが、ここ2年ほど、切符が手に入りにくいことが多く、…

ディア・ピョンヤン

在日朝鮮人2世の女性監督が10年がかりで撮ったホームビデオ。 彼女ヤン・ヨンヒは、南出身の両親が北朝鮮に送り込んだ3人の兄たちを訪ねて、何度も往来する。 万景峰号の中や現地の生活を撮影した検閲済みのテープも織り込んで、本作を完成させた。 映画と…

フラガール

冒頭、斜めの構図が提示される。 少女が2人、将来への不安を語り、ボタ山から斜めに滑り降りる。 集会所の「一山一家」の額が傾き、炭坑が斜陽産業であることが分かる。 窓、戸、カメラのファインダーなどから、のぞき込むシーンが多用される。 本作は、場…

グエムル 漢江の怪物

ミスリードに次ぐミスリードで、脱中心化を図る手法。大いに政治的メッセージを感じる秀作だが、フェミニズムの視点からも読み解くことができる。 本作の登場人物はすべて、母が不在だ。グエムル(怪物)は、不在の母=女性性のメタファーである。 グエムル …

・ 日本映画ベスト3 「 ヨコハマメリー」 白塗りの顔とユニークな衣装で飾られた、彼女の人生の空白の部分を想像しながら観ていた。 観客それぞれに、シナリオを作る快楽を与えてくれる希有な作品。 「ゆれる」 人間関係のありようをカインとアベルの物語に…

ゆれる

父と息子、それぞれの兄弟の確執の物語。人間の根源に関わる゛他者との関わり”を深く掘り下げた必見の名作である。 goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国内外のロケ地めぐりルポ、海外映画祭と観光情報、映画をテ…

マッチポイント

ウデイ・アレンが鮮やかに変身した。 前半はありがちな恋愛もの、後半は畳みかけるようなサスペンス。 ロンドンを舞台にしたオペラ仕立ての悲劇を、しゃれた辛口コメディに仕上げている。 多用される文学やオペラの引用は、登場人物の運命を暗示し、謎解きの…

ココシリ

海抜4700mの山地ココシリ。ここは天国のように美しい最後の秘境である。 私設のパトロール隊が無給で資金難と戦いながら、命がけで密猟者を追い、チベットカモシカを守っている。 実話に基づくフィクションだが、ドキュメンタリーのようなリアル感がある。 …

紙屋悦子の青春

今年4月に亡くなった黒木和雄監督の戦争レクイエム4作目。 この夏から初秋にかけて公開されるが、多くの人に観ていただきたいすばらしい作品である。goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国内外のロケ地めぐりル…

フーリガン

マッチョ礼賛、暴力、男同士の友情を描いた迫力満点のバイオレンス映画を、若くて美しいドイツ人の女性新人監督が作った。 リアリティのある美しい映像、説得力のあるスピーディーな展開。暴力について、深く考えさせられる秀作である。goo映画: 映画と旅行…

ジャスミンの花開く

眼鏡をかけたチャン・ツィイーが、雷雨の中、路上で苦しみながら1人で出産する・・・。 延々と続く衝撃的なシーン。その迫真の演技には誰もが感動するだろう。goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国内外のロケ地…

マンダレイ

最も好きな映画作家の一人、ラース・フォン・トリアーの、「アメリカ」3部作の2作目。 フェミニズムの視点で批評してみよう。goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国内外のロケ地めぐりルポ、海外映画祭と観光情…

アダン

実在した孤高の日本画家、田中一村の、求道者のような激しい生き方を描いた秀作。監督は「みすず」「HAZAN」などの五十嵐匠。 http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=324628 アダンとは、一村が好んだモチーフの南国のフルーツ。パイナップルに似…

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

アカデミー賞監督賞に輝いた「ブロークバック・マウンテン」に続き、異色のカウボーイもの「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」と「アメリカ、家族のいる風景」の2本が公開された。まずは、カンヌ映画祭主演男優賞と脚本賞に輝く「メルキアデス・エ…

プルートで朝食を

試写室にて鑑賞。 アイルランド出身、ニール・ジョーダン監督の最新作。 今夏公開予定。http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=324580プルートとは冥王星のことで、太陽系の果ての小さなナゾの星。 手の届かない幻想的な理想郷のメタファーである…

家の鍵

不在の母、突然出現した父、そして重度の障害を持つ15歳の息子の「人生の重みを問う」物語。力作である。 goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国内外のロケ地めぐりルポ、海外映画祭と観光情報、映画をテーマにし…

あおげば尊し

ゆれ動く不安定な画面、聞き取りにくい音声、空きショットの多用・・・。いかにも何かを期待させる演出だ。教師としての信念や確信の持てない中年男性の苦悩を描いた秀作になるはずだった。 goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的す…

ブロークバック・マウンテン

ラブストーリーは好まないが、本作の質の高さに引き込まれた。同じように”差別(人種VS.同性愛)”をテーマにしてアカデミー賞の作品賞を争った、都会的で動的な「クラッシュ」とは対照的に、牧歌的な風景が醸しだす大らかさが、この長くて切ない物語を優しく…

ホテル・ルワンダ

力作であり、必見である。観た後、しばらくは言葉を失った。 同じ日に 「ロード・オブ・ウオー」を観たが、この二つの作品がみごとに繋がり、問題の根の深さに愕然とした。 goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国…

スタンドアップ

原題は「 North Country 」。北の帝国(家父長制資本主義)に対する、南の国から来た移民(弱者=女性)の異議申し立てがテーマ。 原作はノンフィクションの「集団訴訟」。米国で1984年に訴えを起こし98年に結審、「セクシャル・ハラスメント法」制定…

かもめ食堂

道路に面した食堂の大きなガラス窓と合気道・・・。 この映画のエッセンスはそこに詰まっている。 滅多にないのだが、至福の映画がある。できることならいつまでも観ていたい・・・。 本作は、そんな気分にさせてくれる貴重な逸品だ。http://moviessearch.ya…

単騎千里を走る

母の喪失を巡る、父と息子の確執〜修復の物語。日中それぞれ1組の父と息子のドラマをダブらせて、人とのコミュニケーションという普遍的なテーマを描いている 。 goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国内外のロケ…

ある子供

日本の若者にも通じる、大人になりきれない”子供”を、ドキュメンタリータッチで描いた力作。手持ちカメラによる移動撮影、アングル、音声、小道具などを効果的に用いて、深読みのできる作品となっている。スリリングな先の読めない展開もすばらしい。 goo映…

三年身籠る

女性の身体(妊婦)に焦点を当てて、伝統的な価値観を見直そうという大胆な試みが興味深い。個性派女優・唯野未歩子の原作・脚本・監督(初)作品。女性スタッフを数多く採用し、女性監督ならではの斬新な視点がきらめく秀作だ。未公開作品なので、完全なネタ…

2005年に劇場・ホール・試写室で鑑賞した136本の中で、 日本映画と外国映画それぞれベスト10を選んでみた。 [日本映画]① 埋もれ木 最も好きな監督の一人、小栗康平の作品。”物語は痕跡の上に築かれ、イメージとして 生起する。つまり、物語のポイントは筋…