2012-01-01から1年間の記事一覧

塀の中のジュリアス・シーザー

タヴィアーニ兄弟の2012ベルリン国際映画祭グランプリ受賞作品は、ローマ郊外の刑務所で実践されている演劇活動をドラマ化したものだ。受刑者たちは舞台に立つことで生き甲斐を見出し、一般の観衆とのふれあいを楽しんでいる。 登場する役者は、演出家を…

籠の中の乙女

多様な解釈が出来る秀作。 ギリシャ郊外の豪邸で暮らす5人家族(父母、ハイティーンの長女・次女・長男)の物語だ。父は愛する家族を外敵から守るという名目で、高い塀を巡らせ、外界との関係を完全に断ち切っている。境界を自由に往来できるのは父だけ。子…

桃さんのしあわせ

観ている間中、幸せに包まれていた。終わって欲しくない!と祈りながら観る作品なんてそんなに多くはない。 アジアを代表する女性監督のアン・ホイ(『女人、四十』)が、本作のプロデューサーの実体験に基づいて撮った温かい物語である。登場人物の全てが善…

密告者とその家族

愛知国際女性映画祭より パレスチナは、1967年の第3次中東戦争以来、イスラエル軍の占領下に置かれている。分離壁の建設により、自由に動けない住民たち。彼らの中には、貧しいが故にイスラエルに情報を提供して収入を得る「密告者」と呼ばれる人たちがいる…

牧夫、魚を飼う

愛知国際女性映画祭より 中国西部・新疆地区の少数民族の遊牧民、カザフ族の悲喜を描いた骨太な作品。監督もウルムチに生まれ育った少数民族出身である。10年前に撮ったドキュメンタリー作品を掘り下げ、描ききれなかった部分を肉付けしてドラマ化した。 森…

私のテヘラン

9月1日〜9日まで開催される愛知国際女性映画祭。一年に一度、全国の映画仲間と会えるのも楽しみの一つ。時間を見つけては、食事やお茶をともにし、4日は私主催で居酒屋での懇親会も開く。 『私のテヘラン』は、海外移住をテーマに、現代イランの切実な状況を…

イラン式料理本 

タイトルが軽妙なので、コメディかと思っていたが、非常に重いドキュメンタリーである。 72分とは思えないほどの濃密な内容。監督の家族や知人など7人の身近な女性たちが登場し、自慢料理を作りながら、イラン女性の置かれている状況と壮大な家族の歴史を本…

ヴァンパイア

岩井俊二がカナダを舞台に、全編英語で撮った最新作。通常のヴァ​ンパイアものとはひと味もふた味も違う、切ないラブストーリーだ​。 自殺志願者のサイトで見つけたターゲットを、心中を装って殺し​、被害者から抜いた血を飲んでは吐く、を繰り返す男性高校…

この空の花ー長岡花火物語

新潟県長岡市で毎年8月2日・3日に開催される花火大会は、単なる観光イベントではない。長岡空襲と中越地震の犠牲者を弔い、その復興と平和を祈念する「長岡魂」の象徴なのだ。 本作はふるさと映画ではあるが、長岡の史実を描くことで、我が国の"人災(戦…

少年と自転車&オレンジと太陽 

親に棄てられた子どもを支える、強い意志を持った女性が登場する映画2本、『少年と自転車』と『オレンジと太陽』を続けて観た。 昨年のカンヌ国際映画祭グランプリに輝いたベルギーのダルテンヌ兄弟の『少年と自転車』は、施設に預けられた少年が、迎えに来…

だんらんにっぽんー愛知南医療生協の奇跡

友人の武重邦夫プロデューサー(高校の同期生で今村昌平の愛弟子)が企画製作した、名古屋市の南医療生協を描くドキュメンタリー映画が、6月29日(金)まで、10:00〜1回のみ、名古屋の名演小劇場で上映中だ。 南医療生協は、1959年の伊勢湾台風の被害者約300…

友人の武重邦夫プロデューサー(今村昌平の愛弟子)が企画製作した、名古屋市の南医療生協を描くドキュメンタリー映画『だんらんにっぽん』http://danran-nippon.main.jp/が、6月9日(土)から6月29日(金)まで名古屋の名演小劇場で上映されている。 1959…

近年はますます鑑賞本数が減るばかりだ。昨年は75本。見逃した名作は数知れず。・日本映画 1.『東京公園』/「見つめる、見返される」の繰り返しは、写真や映画が持つ幽霊性を表す。それらを見ているようでいて、ただ自分のみを見ているのだ(内なる他者…

新年のご挨拶を申し上げます 2011年の劇場・ホール・試写室鑑賞映画は75本。ここ数年減少傾向ですが、私及び家族の病気やチビとのつきあいなど、映画以外のことに費やす時間が増えたためです。 連れ合いと観たのは『大鹿村騒動記』のみ。本作の評価に関して…