5本

恋の罪』。鬼才園子温の傑作。
 4人の女性の生きざまを通して、抑圧された究極の深層心理を抉り出す。
 言葉と肉体、表象と意味のズレは、永遠に辿りつけない「城」を目指して旋回するようなもの。
 人間が唯一、辿りつけるのは「死」だが、予測のつかない展開にゾクゾクする。必見!
★★★★★(★5つで満点)


ツリー・オブ・ライフ』のテーマは「この世は試練を受けるためにある」。
 善人のヨブでさえ、神から想像を絶する試練を与えられたが、神を恨まず自分の非を詫びて幸福を獲得する。
 試練は神と対話をするチャンスであり、人間に傲慢さを気付かせ、反省させるのである。
 試練がなければ、神(大いなるもの)との対話をすることもなく、救済もされずにみじめな生涯を送ることになる。


 旧約聖書がベースになっているので解り難いが、人が生きていくうえで、神との対話は不可欠だ、と説いているのでは?
 たとえ苦しい時の神頼み的な存在であっても・・・。


  映像美と音楽にも酔いしれた。今年のマイベストテン入り確実!

★★★★★(★5つで満点)


『一枚のハガキ』、タイトルのハガキの文面のように、シンプルで情があって、反戦メッセージがしっかり感じられる佳作。
立ち上るエロスと絶妙なユーモア、予想を裏切る物語と瑞々しい画面展開に魅了された。
今年度マイベストテン入り間違いなし。『大鹿村騒動記』の過剰さとは対照的だ。
★★★★★(★5つで満点)


『バビロンの陽光』で、 クルドの少年がバビロンの「空中庭園」を見たいと願うのは疑問。
「バビロン捕囚」をし、その後ユダヤ人を苦しませる王が妃のために造った架空の庭園。
クルド人も迫害を受け続けているのだから、皮肉として設定したのか?「父探し」というかなわぬ夢と重ねたのだろうか?
★★★★(★5つで満点)


アメリカン・サイコ』で、クリスチャン・ベールが魅力全開!
顔も仕事も住まいも無機質そのもの。表面は優秀なビジネスマンのヤッピーだが、中身は人間らしさの微塵もない殺人狂だ。
彼の住む世界では、人間性など邪魔になるだけ。すべてが虚構のうえに成り立っているのだから。
★★★★(★5つで満点)