4本
『ストリートダンス』
コンテスト優勝をめざすロンドンのダンスチームを描く物語。
元気を与えてくれるこのダンスが好きだ。
吹き替えには面食らったが、スタジオの確保と他チームとの差別化を図るため、
クラシックバレエとの融合に活路を見出すアイデアがいい。
「越境」はお互いの限界を打破するためにも必須だ。
ヨーロッパトップクラスのアーティストによるダンスシーンも見どころ。
なかでもラストのダンスシーンの優雅さと迫力は圧巻!感動的でさえある。
★★★★(★5つで満点)
『灼熱の魂』
世にも恐ろしい物語。
錯綜する時制と人物。神話の世界さながらに混沌の真っ只中に放り込まれる観客。
不在の父と兄に関する謎解きは、人間の根源の追及であり、ギリシャ悲劇を想起させる。
家族の痕跡を辿る旅は、戦争が必然だった人類の歴史を遡る旅でもある。
今も各地で続く戦争について、「愛憎」は表裏一体であり、憎しみを乗り越えるには「共生」しかない、と本作は教えてくれる。
★★★★★(★5つで満点)
『ウィンターズ・ボーン』
共同体の掟による「父殺し」は、主人公の家族が生き延びるための
通過儀礼でもあった・・・。
これは太古から行われていた、共同体を維持するための必然ともいえる
「いけにえの儀式」に通じている。
命を産み育てる女たちが主導するこの儀式。
女は男たちに命じて、自分たち女を占有する首長を殺し、
トーテムポールを立てて象徴化することで、そのパワーを自分たちのものにした。
こうして新陳代謝をはかることにより、共同体に新たな関係性をもたらし、
サバイバルが可能となるのだ。
本作でも、だらしない男たちに代わって、女たちが主人公をリンチしたり、助けたりしている。
主人公の強さも、歴代のこうした女性たちのDNAを受け継いだものと思われる。
ともあれ女性たちが力強く生きるこの映画を礼賛する。
★★★★(★5つで満点)
『恋谷橋』
後藤幸一監督の新作。ありきたりの成功物語ではない。
人任せにせず、自力で人々を巻き込み、夢を追いかけるヒロイン。
ふる里、三朝温泉の清流が揺れ動く彼女の心情とシンクロして秀逸。
この街ならではの風情と人情も魅力。自然体でいてメイハリのある演出がいい。
★★★★(★5つで満点)