ハ行

ひつじ村の兄弟

2015年 アイスランド、デンマーク/グリームル・ハゥコーナルソン監督 昨年度カンヌ映画祭、ある視点部門グランプリ受賞作品。 最近、本作の舞台であるアイスランドを訪れた知人は「日出ずる国、日本に帰ります。極夜は沢山です」と、SNSに書き込んだ。 神話…

はじまりのみち

2013年 日本 原恵一監督 伝記映画を一代記としてではなく、ある期間に集約して表現するという本作の手法は、スピルバーグ監督の近作『リンカーン』を想起させる。戦時中、失意のうちに帰郷した木下恵介監督の数日間のエピソードを丹念に描くことで、その人柄…

ブルーノのしあわせガイド

観ている間中幸福感に浸れる数少ない作品。心が和み元気がもらえる。とかく殺伐とした現代にあって、束の間とはいえ、ほんわか気分になれるのもいいものだ。 ある日突然、「貴男の息子を預かって」と告げられ、15歳のルカと同居するはめになった元高校教師の…

ホーリー・モーターズ

「映画はモーション(動作)がエモーション(感動)を作ってきた」と語るレオス・カラックスが、13年ぶりに怪作を撮った。タイトルバックから随所に映画へのオマージュがちりばめられている。 のっけから、世界最初の映画といわれるリュミエール兄弟のシネマ…

ヒステリア 

女性用ヴァイブレーターの開発秘話がベース。ちょっと引いてしまいそうな内容だが、女性監督ならではのフェミニズムを絡めた清々しい仕上がりになっている。 イギリスのヴィクトリア朝(1837〜1901)末期が舞台だ。産業革命がもたらした経済の発展が成熟に達…

東ベルリンから来た女  

テーマは、袋小路に立たされたとき、人はどのような決断を下すのか? ベルリンの壁崩壊前の旧東ドイツ。自由への希求を政府に撥ね付けられ、田舎町に左遷された優秀な女医バルバラが主人公だ。彼女は、西側の恋人ヨルクと東側の同僚アンドレ、2人の男性から…

塀の中のジュリアス・シーザー

タヴィアーニ兄弟の2012ベルリン国際映画祭グランプリ受賞作品は、ローマ郊外の刑務所で実践されている演劇活動をドラマ化したものだ。受刑者たちは舞台に立つことで生き甲斐を見出し、一般の観衆とのふれあいを楽しんでいる。 登場する役者は、演出家を…

牧夫、魚を飼う

愛知国際女性映画祭より 中国西部・新疆地区の少数民族の遊牧民、カザフ族の悲喜を描いた骨太な作品。監督もウルムチに生まれ育った少数民族出身である。10年前に撮ったドキュメンタリー作品を掘り下げ、描ききれなかった部分を肉付けしてドラマ化した。 森…

ヴァンパイア

岩井俊二がカナダを舞台に、全編英語で撮った最新作。通常のヴァ​ンパイアものとはひと味もふた味も違う、切ないラブストーリーだ​。 自殺志願者のサイトで見つけたターゲットを、心中を装って殺し​、被害者から抜いた血を飲んでは吐く、を繰り返す男性高校…

 ブラックスワン

「母と娘」がテーマ。子離れ親離れの出来ない2人。バレエ界で挫折した母の願望は、娘に贈った白鳥の湖のオルゴール人形のように、完璧な踊りを娘が実現して成功すること。そのためなら過干渉も厭わない。 娘の方は母の期待がプレッシャーになり、依存と憎悪…

 瞳の奥の秘密

(ネタばれ注意!) テーマは「終身刑」である。それは実刑として執行されるとともに、登場人物たちの想いとして、また監督のメッセージとして、それぞれの瞳の奥に隠されている。 刑事裁判所事務官を退職したばかりのベンハミンは、26年前に扱った未解決の…

ビューティフルアイランズ

南太平洋のツバル、イタリアのベネチア、アラスカのシシマレフ島。これらの島は今世紀中に海没するだろうといわれている。 本作は、”喪われゆく世界”をテーマに、この3つの島の現状を3年間かけて映像化。気候変動がもたらす地球環境への影響の大きさを問題…

プレシャス

「葦牙」と「プレシャス」に通底するもの。 児童虐待をテーマにした話題の2作品。前者は岩手県の児童養護施設が舞台のドキュメンタリーで、昨年度のキネ旬文化映画部門6位受賞、後者は米国の女性作家の小説を素材にしたアメリカ映画で、各国の映画賞を総な…

フローズン・リバー

(ネタバレ注意!)凍てついたセントローレンス川。この川を挟んで、カナダとアメリカの国境がある。一帯には先住民モホーク族の保留地が広がり、彼等には国境はない。 本作は、先住民/白人 、部族の宗教/キリスト教、女/男、常勤/パート、カナダ/アメ…

ファン・ジニ 映画版

朝鮮王朝時代、蔑まれた妓生の身ながら、類まれな美貌と才気で逆境を乗り越え、時代の寵児となった実在の女性の生き方を、恋愛を主軸にして描いている。 http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id331167/ 骨太な作品だが、表面的なストーリーには、や…

北辰斜めにさすところ 

先日、日本映画を応援する「中津川映画祭シネマジャンボリー2007」に初めて参加した。 神山征二郎監督の舞台挨拶があった。監督と主役を務めた三国連太郎さんが、いきさつや裏話など、大変濃いトークを30分ほどされた。 公開は12月だが、岐阜県出身の監…

武士の一分

男性にとって都合の良い女性像が描かれており、観ていて気分が良くなかった。だが、若者の成長物語ということで観れば、それなりに得るものはある。 「武士の一分」にこだわるあまり、献身的な愛を捧げてくれる妻・加世と話し合うこともせず、即刻、離縁を言…

フラガール

冒頭、斜めの構図が提示される。 少女が2人、将来への不安を語り、ボタ山から斜めに滑り降りる。 集会所の「一山一家」の額が傾き、炭坑が斜陽産業であることが分かる。 窓、戸、カメラのファインダーなどから、のぞき込むシーンが多用される。 本作は、場…

フーリガン

マッチョ礼賛、暴力、男同士の友情を描いた迫力満点のバイオレンス映画を、若くて美しいドイツ人の女性新人監督が作った。 リアリティのある美しい映像、説得力のあるスピーディーな展開。暴力について、深く考えさせられる秀作である。goo映画: 映画と旅行…

プルートで朝食を

試写室にて鑑賞。 アイルランド出身、ニール・ジョーダン監督の最新作。 今夏公開予定。http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=324580プルートとは冥王星のことで、太陽系の果ての小さなナゾの星。 手の届かない幻想的な理想郷のメタファーである…

ブロークバック・マウンテン

ラブストーリーは好まないが、本作の質の高さに引き込まれた。同じように”差別(人種VS.同性愛)”をテーマにしてアカデミー賞の作品賞を争った、都会的で動的な「クラッシュ」とは対照的に、牧歌的な風景が醸しだす大らかさが、この長くて切ない物語を優しく…

ホテル・ルワンダ

力作であり、必見である。観た後、しばらくは言葉を失った。 同じ日に 「ロード・オブ・ウオー」を観たが、この二つの作品がみごとに繋がり、問題の根の深さに愕然とした。 goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国…

船を降りたら彼女の島

http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=240385 人が抱えている近代性と前近代性、つまり現在と過去との関係を、久里子の帰郷を通して描いている。 一度近代という回路を通過した者は、もう元には戻れないし、戻る必然性はない。 しかし、人は過去…

ハッシュ

goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国内外のロケ地めぐりルポ、海外映画祭と観光情報、映画をテーマにしたお店紹介など、旅行に出たくなるオリジナルコンテンツを配信中。 40歳を前にして、子供を生もうかどうか…

ピアニスト

観終わった後、すぐには立ち上がれなかった。エリカと母親の壮絶な関係性が、あまりにもリアルで、痛ましくて・・・。衝撃的なラストシーン。エリカは自分の胸にナイフを突きたてて、抑圧の真因である自分の中の「母」を殺す。彼女が「真の私」を確立して生…

ヴェラ・ドレイク

goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国内外のロケ地めぐりルポ、海外映画祭と観光情報、映画をテーマにしたお店紹介など、旅行に出たくなるオリジナルコンテンツを配信中。 マイク・リー監督の最新作。女性の視点…

僕のスウィング

goo映画: 映画と旅行を愛する人々に向けた情報サイト。「個性的すぎる映画館」、国内外のロケ地めぐりルポ、海外映画祭と観光情報、映画をテーマにしたお店紹介など、旅行に出たくなるオリジナルコンテンツを配信中。 ローマ郊外のトレーラー群で、マドリー…

フライ,ダディ,フライ

(ネタばれご注意!) 傷を負わせた権力者と傷をつけられた一市民との戦いの物語。本作のテーマは、「自己確認のプロセス」である。 人は、自己を確認するとき、必ず他者を必要とする。自分は他者にとってどんな存在であるのか 、他者との差異化を必然的に行…

ビヨンド・The・シー

「素晴らしい音楽、小気味のよいテンポ、目まぐるしく交差する時制・・・。観ている間はそういった要素に惑わされて、ボビー・ダーリンの人物像が掴みにくかった。しかし、生まれながらに両面価値的な分裂を抱えて生きる彼を、子供時代の彼(分身)と対話さ…

ベルリン、僕らの革命

(ネタバレ注意!!) 世界中の若者へのメッセージを込めた、辛口のラブ・サスペンス。手持ちカメラの揺れが、若者の不安感を的確に表現、破滅を予感させる映像だが、暗い感じはしない。 「富裕層に恐怖を味わわせること」が資本主義社会へのレジスタンスで…