女性監督にエールを!!

映画の歴史が始まって100 年経つ。草創期には、欧米でも女性監督が男性と肩を並べて活躍した時代があったが、映画産業のスケールが巨大化するとともに、監督を始め、俳優を除く主だった職種から女性は排除され、男性の独占場として定着してしまった。


 昨今の状況を見ると、わが国でも映画学校や映画学科などが増え、監督をめざす女性の進出がめざましい。卒業制作のコンペ受賞者数では、女性が男性を上回る年もあるようになったが、女性監督の数はまだ5%弱と寂しい限り。ちなみに世界で最も先進的なフランスでは、新人監督の半数以上を女性が占める年もあるそうだ。


 女性監督のシンポジュウムで、若くして賞を受けた日本の監督が、「私は男女差別を感じない。実力の世界だ」と発言しているのを目にしたことがあるが、本当にそうだろうか?
 ベテランの女性監督は、「想像以上に男性中心の産業なので、生き残るのはかなり厳しい」と嘆いていたが・・・。


 男性監督が男性の視点で作った作品は数え切れないほどある。しかし、数が多いだけにレベルの高いものばかりとはいえない。
 それに反して、女性監督の作品は、“趣旨が明確で、質的に高い”ものが揃っているといわれている。
 女性監督の作品の多くは“女性だからこそ見えてくるもの”をテーマにしている。人間としても監督としても、マイノリティならではのこだわりがあるので、ユニークな作品をを創作することができるのだ。もう一つ、同じテーマでも、女性と男性とでは感性が違うため、女性独特の表現を編み出すことができる。


 映画監督の浜野佐知さんは、近著『女が映画を作るとき』で、「男性中心社会での困難な状況を乗り越えてきた女性監督たちは、“商業ベースにはのらなくても自分の撮りたいものを作品にする”勇気を持っており、従来の映画では考えられなかったようなテーマを作品にすることができる」と述べている。


 映画は、社会的にも大きな影響を与える芸術である。ジェンダーの解体が叫ばれている現代、一方の性に偏るのではなく、女性と男性それぞれの視点から描いた作品に平均して触れることが重要だと思う。そうすることが、人間性を豊かにし、お互いに他者の立場が理解できるやさしい社会を作ることに繋がっていくのではないだろうか。


 女性監督が増えたとはいえ、世界的にも作品が一般公開される機会は少ないのが実情。日本を代表する女性映画祭の「東京国際女性映画祭」や「あいち国際女性映画祭」などは、ハイレベルの女性監督作品を一堂に会して観られる絶好のチャンス。ぜひ参加されることをおすすめしたい。
(参考/浜野佐知著『女が映画を作るとき』平凡社新書

                       
〔比較的最近のおすすめ女性監督作品〕
・邦画・・・百合祭/沙羅双樹/アニムスアニマ/母のいる場所/犬猫/のんきな姉さん
・洋画・・・モーヴァン/女はみんな生きている/めざめ/4人の食卓/モンスター/恍惚/愛をつづる詩/サーティーン あの頃欲しかった愛のこと