行 アメリカばんざい

友人から「絶対に観て、すぐにブログにアップして」とのメールを貰ったが、時間がなく、やっと昨日観ることができた。
http://:title=http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD12938/index.html  

 必見の傑作である。
海兵隊員の日本人妻は言う。「日本には帰りたいと思うが、だんだんアメリカっぽくなっていくのがいや」と。
 まさにそうだ。マイケル・ムーアの「シッコ」も日本の近い将来を予感させるが、本作も”日本の未来予測図”そのものである。
 世界に誇る憲法9条を改悪するとどうなるか、その答えが明確に表現されている。


 今、アメリカではホームレスが急増しているが、そのうち約4割が退役軍人だといわれている。なぜか?
 彼等は正義のために戦う覚悟で戦場に赴いても、殺すのは敵というより、罪もない民間人であることを知って、葛藤と罪悪感からPTSD(外傷後ストレス障害)に陥る。人格を失って社会復帰はおろか日常生活も営めなくなるのである。


 戦争のカラクリは簡単だ。
 *武器産業を初めとする金儲け中心主義が格差社会を生み出す。
 *「貧乏人は、軍隊に行けば大学の学費も技術も健康保険も入手できる」というウソで釣って、高卒者を新兵として送り出す。
 *奨学金は軍隊に行かなくてももらえる。むしろ入隊すると軍隊の分は差し引かれる。
 *技術は軍隊以外では応用がきかないほど古いものが多い。
 *軍隊の給料が安いので、家族の健康保険を買うことができない。
 *彼等を洗脳して殺人鬼に仕立て上げ、前線に立たせる。
 *3ヶ月のブートキャンプ(新兵訓練)は、人間の尊厳を奪ってロボット化し、戦う相手もモノ化して扱うことをひたすら教え込む。
 * 劣化ウラン爆弾を作るのは海軍、落とすのは空軍。お互いに情報交換しないので、何も知らず、防護服もなしで行動する。その結果、自身も被爆して後遺症で苦しむことになる。
 *正義を見出せず、PTSDや負傷、劣化ウランによる被爆などで退役。
 *除隊後のフォローはゼロに等しいので、ドロップアウトせざるを得ない。
 *軍人病院は新薬の実験基地。副作用を承知で受診するのがいやならそれまでだ。
 *年金や手当の手続きが難しいうえ、もらえても1カ月115ドル程度と少ない。


 ベトナム戦争の犠牲者である退役軍人の精神病患者(PTSDなどに)は、1980年以降、州立病院から追い出された。アル中、ヤク中になり、森の中でテント生活するホームレスも多い。殺人事件も日常茶飯事だ。
 さらに、イラク戦争後は、ホームレスになる時期が早くなり、若年化しているという。
 養護施設やシェルターがあっても、待機者が多いため期待できない。


 「金持ちになるほど現実から遠のく。寄付もしない人が多い。皆何も知らないので、他国での戦争に加担して、行け行けと叫んでいる」と嘆くホームレス。
 「帰還兵がもっと声を挙げるかと思った 。除隊後は仕事も教育も支援も特典もなし、という現実を知ってもらうために高校生に話をしに行く」と、帰還兵ケア相談員。
 無許可除隊の相談は、派遣か再派遣間近の人からのが多い、と語る。


 こうした軍隊経験者の他に、兵士の母や老人による徴兵阻止運動が細々と行われている。
 「私たちは怒れる優しいおばあちゃん、みんなの命を助けるの」と歌いながら、新兵募集の貼紙に「Closed」の貼紙をして回る老女たち。手錠を掛けられてもニコニコして「喜んで逮捕されます。1人でも入隊から救えれば価値があります」と胸を張る。


 そこで、私が最近、関心のある国が中米のコスタリカである。この国は軍備をしない。その論理は非常にシンプルだ。
 「軍備をすると、他国は恐いから襲ってくる。軍備をしないと、他国は安心だから襲わない。そんな無駄なことに金と時間を費やすよりも、教育を充実させよう」というわけだ。
 本作を観ていて、アメリカも我が国も、何と虚しいことを繰り返しているのか、と思った。全ての国でコスタリカ化ができないものだろうか・・。

 若い人にとくに観て欲しい作品である。
 (★5つで満点)